第2回 なぜ植物の店が、住宅相談につながるのか――ビレッジ戦略は「環境設計」だった
正直に言う。
グリーン雑貨店を始めた当初、私にはわからなかった。
なぜ、植物を売っているだけの場所に、住宅の相談が来るのか。 なぜ、お客様は家を建てようと思ったとき、私たちの会社を比較表を開く前に思い出してくれるのか。
お客様に聞いても、返ってくるのはいつも曖昧な言葉だった。
「なんとなく、ここが好きで」 「気づいたら、ここに相談しようと思っていた」
理由が言語化できない。感覚ではわかる。何かは確かに起きていた。
ビレッジ戦略とは、住宅を直接売り込むのではなく、場と関係性を育てることで、結果として「選ばれる状態」をつくる考え方だ。
今なら少し、その正体を言える。
私たちは、売場をつくっていたのではなかった
14年間、グリーン雑貨店という場を運営してきた。
植物があり、緑の香りがあり、季節の変化がある。
何も買わなくても、何も決めなくても、ただそこにいると気持ちがいい。
最初は「住宅受注のための集客装置」として始めた。
でもいつの間にか、その発想は変わっていった。
お客様が警戒を解いて、また来てくれる。
スタッフと他愛のない会話をして、また来てくれる。 季節が変わるたびに、また来てくれる。
その繰り返しの中で、私たちがつくっていたのは「売場」ではなく、人の気持ちと関係が自然に育つ「環境」だったのだと気づいた。
反響は、営業の前に育っている
ビレッジ戦略の導入ステップを整理すると、こうなる。
↓
関係資本を育てる
↓
価値観を共有する
↓
住宅受注が副産物として生まれる
「住宅受注」は最後に来る。 最初に来るのは「場」だ。
多くの住宅会社は、この順番を逆にしようとする。
先に「住宅を建てませんか」と言い、その後で信頼を得ようとする。
でも実際には、信頼は「場」の中でしか育たない。
反響は、ある日突然やってくるものではない。
営業の前に、すでに環境の中で育っていたのだ。
「環境設計」という言葉で、腑に落ちた
長年、感覚ではわかっていたことに、ようやく言葉がついた。
「環境設計」という考え方だ。
正解を探してから動くのではなく、まず人が集まりたくなる環境に身を置く。
その環境の中で、関係が自然に育っていく。
そして関係が育った先に、相談が生まれ、受注が生まれる。
私たちが14年間やってきたことは、まさにこれだった。
あとから本を読み返していて、カール・ワイクという経営学者の議論に近いのかもしれないと思った。
「人は環境に合わせて動くだけではなく、動くことで、そこに意味のある環境そのものをつくっていく」
私たちが植物を並べ、場を整え、人が戻ってきたくなる空気を育てた行為の積み重ねが、信頼や相談が生まれる土壌をつくっていた。
理論が先にあったのではない。14年の実践の後に、言葉が追いついてきた。
次回:「なんとなく好き」の正体を整理する
「なんとなく、ここが好きで」という言葉。
この感情は、どこで生まれるのか。
なぜそれが、住宅の相談や受注につながるのか。
次回は、その構造をもう少し丁寧に整理したい。
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真崎 健(まさき たけし)
株式会社エスティナ/株式会社Birth&Rebirth
代表取締役
ビレッジ戦略提唱者