第3回 住宅会社が比較される前に選ばれる理由――「なんとなく好き」の正体
お客様はなぜ、あなたの会社を選んだのか。
性能でも、価格でも、立地でも説明はできる。けれど実際には、多くの人が「なんとなく、ここが好きで」としか言えない。
この記事では、その「なんとなく好き」が、なぜ住宅の相談や受注につながるのかを、ビレッジ戦略の視点で整理したい。
ビレッジ戦略とは、住宅会社が比較される前に選ばれるために、商品だけでなく、場・空気・自然・接客・地域との関係を含めた”環境全体”を設計する考え方だ。
なぜお客様は「なんとなく好き」で会社を選ぶのか
SNSで言えば「いいね」。英語で言えば「like」。
理由は説明できない。でも確実にそこにある感情。
脳科学の世界では、人は理性より感情が先に動くという研究が積み重なっている。私には証明できない。でも、23年の現場で同じことを繰り返し見てきた。
場の空気。植物の香り。光の入り方。 レジの向こうにいる人の温度。
これらは言葉にならない。説明もできない。 でも身体は確実に受け取っている。
私はこの場所を「直感の場所」と呼んでいる。
人は比較の前に、身体で会社を判断している
人間には本能的に、自然とつながりたいという欲求がある。これを「バイオフィリア」と呼ぶ。
植物があり、緑の香りがあり、季節の変化がある。 何も買わなくても、何も決めなくても、ただそこにいると気持ちがいい。
グリーン雑貨店を始めて14年。私が一貫してこだわってきたのは、この「直感の場所」を設計することだった。
説明して売る場所ではなく、身体が喜ぶ場所。 来ただけで、何かが変わる場所。
顧客はその場所に繰り返し戻ってくる。 そして繰り返し戻ってくる中で、言葉にならない信頼が育っていく。
反響・受注につながる認知の流れ
「直感の場所」から始まる認知の流れを整理する。
植物・場の空気・光・香り・人の温度
↓
「好きだな」(感情・好感)
↓
善い認知
「あのお店、なんか好き」「あそこらしいよね」
↓
純粋想起
「家を建てるなら、あの会社」
↓
相談・反響・受注
ここで使っている3つの言葉を定義しておく。
直感の場所: 身体が先に「ここはいい」と感じる場。説明より先に、感情が動く。
善い認知: 「あのお店、なんか好き」「あの会社らしい」と感じている状態。会社名やブランド名が、形容詞のように使われ始めたとき、善い認知が届いている証拠だ。
純粋想起: 家づくりを考えた瞬間、比較する前に名前が浮かぶ状態。広告を見たからではなく、積み重なった体験が呼び起こす。
多くの住宅会社は、この地図の「相談・反響・受注」だけを見ている。だから直接営業し、説明し、比較される。
ビレッジ戦略はその逆だ。地図の一番上、「直感の場所」から設計を始める。
「◯◯らしいよね」が生まれると、比較されにくくなる
善い認知が育つと何が起きるか。
他社との比較が起きにくくなる。 「ここじゃないとダメ」という感覚が生まれる。 一部の顧客にとって「絶対ここ」になる。
そして家を建てようと思った瞬間、比較表を開く前に「あの会社に相談しよう」と名前が浮かぶ。
これが純粋想起だ。
住宅の反響は、広告や営業トークだけで生まれるわけではない。比較される前に「ここに相談したい」と思われる環境が、すでにできているかどうか。
ビレッジ戦略は「直感の場所」から設計する
スペックを説明しても、「好きだな」は生まれない。
でも、植物のそばで過ごした30分が、何年も後の「指名」につながることがある。
住宅業界が「完全なハコ」の競争に消耗している間、

私たちは「直感の場所」を14年間、耕し続けてきた。
その場所から生まれた「好きだな」が、今、反響という形で顔を出している。
あなたの会社の「直感の場所」は、どこにありますか。もしまだ言葉になっていないなら、そこに次の成長の種があるかもしれません。
このシリーズの他の記事
第1回:その住宅反響(受注)は、なぜ来たのか
第2回:なぜ植物の店が、住宅相談につながるのか
真崎 健(まさき たけし)
株式会社エスティナ/株式会社Birth&Rebirth
代表取締役
ビレッジ戦略提唱者